フットボールの参考書

自分のサッカーに関する考えのアウトプットの場です。文字通り「参考」にして頂けるとありがたいです。

ポジショナルプレー概論2

れうすです。今回も引き続きポジショナルプレー概論を書いていこうとおもいます。ポジショナルプレーについては結構書きたいことがたくさんあるのでまとめるのが大変なのですが、概論を今回でなんとか終わらせて早く実践編に移りたいなと思ってます。ちなみに概論では、本当に概要しか触れていないので細かい解析や僕なりの理論分解は実践編からになるのでみなさんもう少し待っててね( ^ω^)ニコッ

(前回のポジショナルプレー概論1を読んでから、2を読むことをおすすめします)

 

・選手同士の相互作用

さて、それでは本文に入りましょう。概論1ではいいポジションについて述べましたが、今回は選手同士の相互作用について話していきます。この項のキーワードはスペースになります。

それでは相互作用(以下シナジーと呼ぶ)の抽象的なイメージを確認しましょう。

 

シナジー=相手DFの守備ゾーンの最大化をしつつ、味方選手同士がプレーの選択肢を複数持てるような関係性を構築している。

 

さてニュアンスは伝わると思うのですが、まだいまいち分かりにくいですね…シナジーに関して具体例を用いながら、よりイメージを鮮明にしていきましょう。

 

まず相手DFの守備ゾーンの最大化についてです。これはわかりやすいと思うのですが、守備の基本としてなるべく守るエリアを小さくするというコンセプトがあると思います。これはまあ当然といえば当然で、1人で守れるゾーンというのは限界があるわけですし、それが広ければ広いほど守備の強度は落ちてしまうわけです。ならば守備強度の低下を防ぐためにはなるべく守備すべきゾーンは小さい方がいい。というのはごく当たり前な話だとはすぐわかりますよね。

 

では、攻める側に立てば、逆のこと、つまり守備すべきゾーンの最大化をさせることをすべきというのも当たり前になる訳です。言い換えるとすれば味方にスペースを与えるということになります。(このような「ゾーン」に関わることなどを数学的に解析した「サッカーマティクス」という本があります。物凄く新鮮なのでぜひご覧ください。)

 

サッカーマティクス 数学が解明する強豪チーム「勝利の方程式」

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  それでは、この「ゾーンの最大化」(≒スペースを与える)を図をつかって感覚的な理解を促してみます。

 

図1




f:id:reus433:20171107130402j:image

例として、このような4vs4の局面を想定します。グレーは1人が守れるゾーンの最大値、水色が最も能力を発揮できるゾーンと考えてください。

図1を見れば、OFがそれぞれゾーンの最大値の境界に立っているため、DFはオフェンスをマークするために最大の労力が強いられることがわかります。これが守備ゾーンの最大化ということになります。さほど難しくありませんね。

 

では、ここらからがポジショナルプレーで最も重要な話になるのですが

このポジションに立つことは果たして「良いポジション」に立っていることになるのだろうか?

ということです。賢明な皆様ならお分かりでしょう。答えはNOです。

 

なぜか?それはこのポジションに立つことは選手同士の相互作用をもたらしていないからなのです。

たしかに、守備ゾーンの最大化に成功し、ボールホルダーにスペースを提供することは出来ました。しかしそれだけです。これでは「相互作用」とはいえません。ただ「ボールホルダーへの作用」に留まります。

 

どういうことなのか?簡単です。本当にそこでボールを受けられるの???ということです。図の状況でいうならボールホルダーからのサポート距離が遠すぎてパスが出せません。ボールが受けられないのであれば、そもそも選択肢はドリブルしかありませんから守備は簡単ですね。

はい。ここで概論1で出てきた3つの優位条件が出てくるわけです。

一応おさらいしてみましょう。3つの優位条件とは

  1. 数的優位
  2. 配置的優位
  3. 質的優位

の三つでした。なぜこの三条件が大事なのかというのは「相互作用」を発揮するために必要だからなのです。3つの条件を満たすことがなぜ相互作用をはっきすることになるのか、さらに図を見てイメージを鮮明にしましょう。

図1ーA


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まずこの図、見ての通り青4にたいして数的優位を保っています。しかし配置的に優位に立っているでしょうか?NOですね。青4は最小の労力、つまり立っているだけで赤8、10を守備できるからです。これでは配置的に優位とはいえません。

 

もうひとつの質的優位も全く満たせていません。なぜならボールホルダーに対してスペースが与えられていないためプレーの選択肢が限りなく少ないからです。パスを出せば間違いなくプレスがかかるし、ドリブルするスペースもない。これでは能力が発揮できませんね。よって相互作用がまったく発揮されないため「良いポジション」とは言えないでしょう。

 

次です。

図1ーB


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詳しい説明は省きますが、全てのオフェンスが配置的優位に立てていませんし、数的優位もありません。唯一言えることはお互いにスペースを利用しあえる距離感を保っていて質的優位がぎりぎり保てている。というくらいでしょうか。とはいえたいして優位ではないので「良く」はないですね。

このあたりで段々分かって来たでしょうか?3つの優位を保つポジションを取ることは

  1. ボールホルダーに対してパス、ドリブル(ドリブルできる≒スペースがあるということ)など複数の選択肢を与える。
  2. 味方のプレーヤーはプレー選択肢が増え、なおかつ時間が与えられる。

というメリットをもたらすのです。

そのメリットを享受できるようなポジションがこちら⬇

図2ーC


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守備ゾーンの境界に立つことで配置的優位を得るとともに局所的に数的優位を得ています。また適切な距離感を保つことでスペースも得ていて、プレー選択肢も多く質的優位を保っていると思います。

 

さあ、ポジショナルプレーの「良いポジション」というのがぼんやりとしたイメージから論理プロセスとして認識できるようになってきたのではないでしょうか?

 

今回はこの相互作用について、大体の説明が終わったところで終わりたいとおもいます。相互作用は抽象的なイメージの域を出ないとは思うのですが、それでもかなり論理的に整理したつもりです。それが少しでも伝わっていれば嬉しいなあとおもいます。

最後に、

   ポジショナルプレー=相互作用の発揮

                                      ↓

                           優位の三条件

という構図になっているよーということを確認して終わりたいとおもいます。

長文読んでくださりありがとうございました。

ポジショナルプレー概論3 - フットボールの参考書へ続く)