フットボールの参考書

自分のサッカーに関する考えのアウトプットの場です。文字通り「参考」にして頂けるとありがたいです。

ホッフェンハイムvsドルトムント〜攻守にわたるポジショナルプレー〜(後半戦)

さて、後半戦です。

 

後半戦のザックリとした展開は

 

守るホッフェン&持たされるドルトムント

 

という感じ。先制してあまり無理をしなくて良いホッフェンハイムと追いつくためにもボールを握りたいドルトムントは思惑が一致して前半とは打って変わってポゼッションはドルトムントが握っていく。

 

後半開始5分間の支配率はドル70%ホッフェンハイム30%だったほど、しかし効果的な攻撃は全く仕掛けられない。ブロックの外を行ったり来たり。特にシュールレがほとんど消えていて前半同様ロイス、ゲレイロのゴリゴリ個人技くらいしか攻め手がない感じ。

 

ドルトムントも5-3-2の泣き所、WBの目の前を起点に攻めようとするもののホッフェンハイムはポジショナルなディフェンスであっさり対応してしまう。ドルトムントとはかなり対照的な感じの5バックの完成度だった。一般的に5-3-2の場合変換ディフェンスをするのだけれどホッフェンハイムはそれがほぼ完璧に近い。一方のドルトムントはなんとなーくやっているようなやってないような。もちろんダブルボランチと3センターの違いは大きく影響しているけれども、それにしても……ちょっと完成度が違いすぎる。

今更にはなるけれど変換ディフェンスとはなんぞやという人もいるだろうから一応おさらい。

5-3-2では基本的にサイドの枚数が足りなくなるからそこを狙われるのだけれど、それに対応するためにある程度決まった形のスライドが行われる。それが変換ディフェンス。


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具体的には4-4-2変換と4-3-3変換の2つでこの試合においては相手も3バックなので割と変換がわかりやすい形で起きていたのでもし5-3-2の守備について学びたい人は実際に試合を見ることをおすすめする。

まずは4-4-2変換


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シンプルに3センターの脇をWBが狙ってきた場合に自分のWBを押し出し、DFラインをそれに応じて4バックに変換するもの。ちなみに言うとWBは絶対縦切り、理由はスライドが間に合わず相手のWGにつけられると結構やばいからと3センターは中央圧縮してるからそこに誘導した方がボールが取れるからの2つ。

 

2つ目の4-3-3変換。これは相手がサリーダラヴォルピアーナしてHVが運んできた場合、もしくは逆サイドからのサイドチェンジ後でWBのスライドが間に合わない場合に発生する


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要するに同数プレスのうちの一つ。ちなみにドルトムントはこの4-3-3変換で同数を作られた時にほぼ何も出来ずバックパスしてそれを狙われるということを繰り返していた。ドルトムントの同数プレスがあっさり剥がされていたのとはだいぶ対照的だった。ホッフェンハイムの追い方がそれだけよかったのだけれどね

 

ということでこの変換の前になす術なくHVとWBの間でボールを行ったり来たりさせることとなったドルトムント。4-4-2変換時にHVがフリーになることを利用して運ぶという選択肢もあったのだけれどシュメルツァーピシュチェクはほぼそれをしなかった。なのでホッフェンハイムとしては一瞬やばいかなとなるんだけれど、やっぱり平気だねとなるのでだいぶ楽。

 

というわけで、これはホッフェンハイムはこのまま持たせ続ければいいなと思っていたんだけれどなんと58分。ホッフェンハイム的には完全にハメ切ったと思ったところでロイスが2枚ブチ抜いてチャンス到来。

数的有利になった所を見逃さずロイス、ゲレイロがスーパー個人能力からゴールしてなんと同点にしてしまう。

 

困ったホッフェンハイム、引き分けだとCLがこぼれ落ちてしまう。よってもう1度ボール保持を開始、ちなみにやることは前半と全く変わらない。ドルトムントもやることは全く変わらないので揺さぶり放題のホッフェンハイム

 

というわけで、わずか5分後サイドチェンジからの再サイドチェンジでスライドを完全に崩壊させて数的有利をつくりポッカリ空いた中央にサライが飛び出して勝ち越しゴール。なんというか残念だったのがホッフェンハイムのボール保持に対してドルトムントは全く対応に変化がなかったこと。散々フォクトに散らされて揺さぶられていたのに同じことをやられてみすみす失点したところはほんとに残念

ただ、CLストレートインにはもう1点必要なホッフェンハイムはまだボールを保持して攻撃を続ける。やることは一緒。本当に疑問なのはドルトムントが何も変えなかったこと

というわけで同じような揺さぶられたかたで崩されるドルトムント、サイドでFKを与えてしまい、そこから三失点目。ホッフェンハイムは試合をクローズしにかかる。具体的にはブロックをしいて持たせる作戦である。基本的に持たせてても全く問題はないのでプレスラインも10mほど下げて引きこもって締めにかかっていき、隙あらばカウンターでというところ。ドルトムントとしてはようやくここでシュールレを下げて香川in、左サイドをかき回わそうとはするけれど相変わらず的確な変換と全くズレないホッフェンハイム、ブロックの外で釣りだそうとしても勝手にやらせることでドルトムントの思い通りにはさせない。そうこうしてるうちにロスタイムにはいり今季引退のヴァイデンフェラーが登場し、事実上の白旗宣言のドルトムント。そのまま試合は終了し、見事CLストレートインを決めたホッフェンハイムでした。

 

まとめ

 

非常に長くなってしまったのが申し訳ないですwホッフェンハイムは攻守にわたるポジショナルプレーがひかり完勝でした。僕としてはドルトムントとの戦術合戦が見られるかなと思ったのだけれども意外にもホッフェンハイム臨機応変な対応を見せた感じ。ドルトムントはリソース勝負になってしまったのが残念だったかなって感じでしたとさ

ホッフェンハイムvsドルトムント~マッチレビューやってみました(前半戦)~

サボっておりました、れうすです。

 

なんとなく気分で、今回はマッチレビューやってみます。継続的に追っかけたりした訳じゃないんであやふやなところもありますが、悪しからずヽ(*´∀`)ノ

 

さて、今回とりあげるのはブンデスリーガ最終節、ホッフェンハイムvsドルトムントの一戦。どうやらこの試合とレヴァークーゼンとの試合の結果次第でCLストレートインがきまるらしい。試合前は3位ドル、4位レヴァークーゼン、5位ホッフェンハイムということで全力のホッフェンハイムが見れそう。

 

まずはそんな両者のスタメンから
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ホッフェンハイムはおなじみの5-3-2。それに対してドルトムントは合わせに来たかチーム事情かは定かではないが布陣をかっちり噛み合わせた3-4-1-2となっている。この並びが示している通り、前半立ち上がりは基準点がハッキリした状態。つまりほぼズレなくスタートする。


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ボールを持ったのはホッフェンハイムドルトムントはボールを明け渡す形。

 

そんなドルトムントはほぼマンツーマンのような形で、数的不利となる最終ラインのパス回しを放置するという選択をした。

こんな感じ↓


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特徴的なのは前述の通り最終ラインは放置なのだが、特にフォクトを全放置してグリリンチュを消すという選択をしたということ。これによってフォクトは自由にプレーできる。フォクトが自由にプレーできる分HVのビチャクチッチ、アクポグマの2人は横幅を目いっぱい取ることができ、攻撃はそのHVからスタートすることとなった。

HVの持ち上がりに対して、ドルトムントのFW2人はゆるっとプレスをかける。ゆるっとなのは後ろがマンツーで全部同数だから。なんなら最終ラインは1人余りなのでやらせても問題ないから。ということでHV2人は持ち上がれるけどパスコースがまるで無いという状況がつづく。ただしHVは基本フリーなのでサイドを変えることは基本的にしなかった。
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ホッフェンハイムとしてはレーンチェンジやWBのWBピン止め→チャンネルランなどで相手HV周りを、HVからのミドルパス、ロングパスで狙っていくものの、やはりマンツーできっちり対応される分大きなチャンスには繋がらなかった。さらにいえばインサイドが流れる&ロングボールでカットされたときにちょくちょくカウンターを食らっていたので序盤はどうなるかわからない展開という感じだったくらい。象徴的なのが17分のゲレイロのシュートとか。とにかくドルトムントは前線の個人能力が高く、カウンターもまあまあ威力があったのでここで得点が取れたら面白かったなあと思ったりもする。

 

そんな展開も17分頃から徐々に変わっていく。ホッフェンハイムが噛み合わせを外しに行ったのである。マンツーで付いてくるのを利用してインサイドハーフがガンガン開くことによってヴァイグル、シャヒンを混乱に陥れていった感じ。それに加えてFWの片割れの列を降りる動きも組み合わせて行ったので、ドルトムントホッフェンハイムからボールが奪えなくなっていく。

 
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(オレンジのエリアはホッフェンハイムの数的有利、相変わらず持ち上がるHV)

 

ハーフスペース一杯まで開くインサイドハーフに対して誰が出るのかという問題を叩きつけ続けるホッフェンハイム。ここを起点にしながらホッフェンハイムは揺さぶりをかける。もしHVが出てくるならチャンネルが開くのでWB,CFのチャンネルランが炸裂。


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これに加えて先ほどのレーンチェンジがつづくのでドルトムントとしてはどう守ればいいかよく分からなくなってしまった感じ。元々HVのポジショニングが怪しい感じだったのでホッフェンハイムはここに活路を見出していく。

 

ちなみにヴァイグルが出てくるパターンの場合はFWへの楔→レイオフを狙ったりする。シャヒンがきちんとスライドして対応するなら落ち着いてサイドチェンジ。ダブルボランチで横幅68mを守ることを強いていく、ドルトムントとしてはシュールレがグリリンチュとデートしている分どうしてもハーススペースを埋めきれないシーンが続出してしまうのだが2トップが埋める様子はあまり見られず、ホッフェンハイムがボールを保持し続ける展開へ、失っても即座に奪還プレスでドルトムントに息をさせない。とは言ってもさすがドルトムントというところかちょくちょくプレスを外して撤退を強いるシーンもあった。ただしあまり秩序だったような感じのプレス回避では無かったのでかわせたりかわせなかったりはその時次第の様子。またボール保持できてもホッフェンハイムの巧みな5-3-2のディフェンスに対してWBとHVの間でパスが行ったり来たり、もしくはゲレイロやプリシッチ、ロイスの単騎突破くらいしか攻め手はなく、持たされている感が全開。持たされている分ハメられてプレスガンガンにかけられる→失うの繰り返しでそんなことを繰り返しているなか、ついにビュルキがやらかしてしまい失点。決めたクラマリッチは褒められるべきだけどあのビルドアップはいただけないかな…

 

 

 先制に成功したホッフェンハイムはやってたことを継続、ゾーン1からプレスをかけ続ける。ドルトムントは基本困っているものの、質的優位でぶん殴り続ける。たまにでるカウンター返しなどはまあまあ脅威になっていたものの、基本的に展開は先制前とあまり変わらない。

 

変化が訪れたのは32分頃、シュールレがカウンターの決定機を外したあたりから。

シュールレがグリリンチュとのデートを辞めてフォクトに対してプレスをかけてゾーン1からの同数プレスを開始する。


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ドルトムントとしては前プレでの窒息を狙ったのであろうが、残念ながら動じないホッフェンハイム。ポッカリ空いたグリリンチュにあっさりつけたり、バウマンつかったやりなおし、バウマンのデザインされたロングボールでハーフスペースでボールを収めていく。5-2-3の2の横にひたすら降りられると2列目のプレスがついていけないことを利用されるとどうにもならないドルトムント。同数プレスも5分で辞めて、あとは元通りホッフェンハイムがボールを握り続け1-0のまま前半は終了していった。

 

(後半へつづく)

 

カウンターを考えよう(前半)

みなさんこんにちわ、れうすです。

 

今回のテーマはカウンターです。色々書きたいことがあったのでアンケートを取ってみたところ意外にもカウンターの票数が若干多かったので

今回はカウンターについてアウトプットしようと思います

 

 さてカウンターといえばサッカーの得点の3割から4割を占めると言われる得点源ですよね。これはハンドボールやバスケでも変わらないようで、このような球技の重要なファクターになっています。今をときめくゴールデンステイト・ウォリアーズも速攻がえぐいチームですし、ポゼッションのイメージが強いシティやナポリもカウンターが物凄く上手いですから絶対にないがしろにしてはならないものとなります。しかし中学や高校年代ではカウンター=ただ速く攻める程度の感覚で行っているチームが多く、なんとも悲しいなーと思うことが多いです。というわけで今回はカウンターというものを少し論理的に考えようと思います。

 

 

  ・カウンターはサイドに開くな縦パスを入れるな!

 カウンターといいますと、よくイメージされるのが、CFに縦パスをいれて、キープし味方の攻め上がりを待つ。という非常にオーソドックスな形だと思います。


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しかし、、この形かなり成功率が低いと思われます。当たり前といえば当たり前ですが、当然中央への縦パスというのは敵も最も警戒しますし、なによりCBもゴールラインに対して垂直なパスというのはアタックしやすいものですからその状況でCFが3秒も4秒もキープしてたらはっきり言ってそのフォワードは変態です。



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まあおそらくきっちり良い形で縦パスが入ってもかなりキープは厳しいでしょうし、大抵のカウンターでそのようないい状況はかなり希です。となると、中央への縦パスをCFがキープという形をカウンターとして整備するのは無理があるのではないでしょうか??

 

そうなると、次に使うべきはサイド、CFがサイドに流れて基点をつくると言うのがよく言われることでありますね。



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普通であればそうなるはずですが、実はこれもあまり良いとは言えません。シンプルな話でゴールから遠ざかることによって相手にとって脅威があまり無いからです。

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守備を普通に仕込まれたチームであれば、ボールがサイドに流れる=自分たちの守備が上手くいっているという認識になりますし、何よりカウンター時の守備でサイドまで引っ張り出されるセンターバックはかなりアホです。(もちろん飛び出さなければならないときもある。)

よって、カウンターで攻めたいというときにサイドを使うというのはあまり得策ではありません。

 

 

さて、ではどこを使えというのでしょう?賢明な皆さんならもうお気づきでしょう。残された場所は一つ、そうハーフスペースです。(詳しくは後半で扱います。)

 

 自分が高校の時のチームの基本的な攻撃コンセプトはカウンターでした。ハイプレスからのショートカウンター、サークルディフェンスからのショートカウンター、ロングカウンター、ゾーン2におけるスペース圧縮からのハーフカウンター、リトリートからのロングカウンターなど考えうる限りほぼ全てのカウンターについて練習しました。システムでいえば5-2-3からのカウンター、5-3-2からのカウンター、4-4-2からのカウンター、4-3-1-2からのカウンター、4-3-2-1からのカウンター、4-1-4-1からのカウンターなどなど高校3年間をカウンターと守備に費やしたといっても過言ではないほどです(笑)

 

それぞれ、守備ラインの高さや人の配置の関係でディティールには細かな差が存在していますが、うちの顧問がどのカウンターでも絶対に共通して言っていたことが一つありました。それがペナルティエリアの幅から外に出てはならない。カウンターはペナルティエリアの幅のなかで完結させなければならない」ということでした。特にうちのチームはまずサイドに誘導し、相手が中を狙ってきたところで奪う。という認識があったので、中央で奪い完結させるということは非常に重要なファクターでした。これはあくまで主観ではありますが、ペナ幅から外に出てしまった攻撃は大体失敗しています。

 

さて、なぜペナ幅で完結するカウンターは成功し、ペナ幅を出たカウンターは失敗してしまったのか?ここからはなぜペナルティエリアの幅で完結させなければならないのか、そしてペナルティエリアの幅で完結させるというのはどういうことなのか?(詳しくは後半扱います)を考えましょう。

 

まず、ペナ幅で完結させることの理由ですが、全く難しくありません。ゴールに最も速く近づけるからです。

 

小学生でもわかることですが、移動時間というのは距離速さに左右されるわけです。効果的なカウンターというのは

相手の帰陣までの時間>攻撃時間

という状況であるわけです。よって攻撃時間をなるべく短くしたいと考えるとゴールまでの距離はなるべく短く、かつ速度は速くということが必要になります。これはおそらく全ての人が共通の認識であるはず。よってサイドに展開する時間はマイナスに作用することが多い訳です。下の図を見ていただければ誰でもわかります。

 
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上の説明ではサイドに展開しない事のメリットは説明できても、ペナルティエリアの幅で完結させる理由を説明したことにはなりませんね。ではなぜこの「幅」というのが大事なのか。それはペナルティエリア幅で完結することは選手間の距離が自動的に短くなることに繋がるからです。

  • 選手間の距離が短い
  • =ボールの移動時間が短い
  • =相手のスライドまでの時間が短い
  • =ズレが生まれやすい

ということにつながります。



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よって速度をあげつつ、相手のDFのズレを生みやすくなるということです。これ非常に重要です。さきほどサイドに展開されるのは怖くないと言いましたが、サイドに展開すると単純にゴールから遠くなり脅威が減るというのに加え、じつは選手間の距離が広いことによってケアがしやすくなるという理由もあったのです。

 

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ペナ幅で完結させることの意味を理解していただけたでしょうか?

 

今回は少し長くなりすぎたので一旦ここで終わり、後半へ移ろうと思います。

 

 

 

 

サークルディフェンスについて



みなさん、、お久しぶりです。れうすです。

今日はTwitterで見かけたサークルディフェンスについて扱います。どういう関係かはわからないのですが、僕の高校時代にこのサークルディフェンスと全く同じことをしていて、もう4、5年程前からあったシステムではあるのですがこの際誰が提唱したのかとかはどうでもいいので少し中身を見ていこうかと思いますw(どうやら2013年頃からあったらしいのでうちのチームが強ければ着目されていたかもしれませんww)

 

今回突然サークルディフェンスについて扱うきっかけはこちらのツイートでした。

カツオサイクロンさんがオススメされていた記事ということもあり、少し読んでみたところ「あれ?これ聞いたことあるぞ!?てかやった事あるぞ!?」となったわけなんです。

その後カツオサイクロンさんとTwitter上でやり取りを交わすうちに当時のことをいろいろ思い出したりして、アウトプットしてみようと感じたので今回のテーマにしました。ということでサークルディフェンスについて高校時代の経験をベースにして、どのようなシステムで、どのようなメリット、デメリットがあるのかということを中心に書いていきます。

 

・サークルディフェンスのメリット、デメリット

サークルディフェンスとはどのようなシステムなのでしょうか?先のツイートで挙げた記事にも書いてあることなのですが、チーム全体を円に見立てて、その軸線を相手にぶつけてボールを吸い取るディフェンスです。それに対し、従来のディフェンスをフラットディフェンスと呼んでいるのですが、このフラットディフェンスのイメージはチーム全体をブロックと見立てて、ブロックで相手の前進を阻むディフェンスといえるので、考え方がかなり変わります。

 

サークル:全体=円 、軸線をぶつけ、ボールを吸い取る

                                     

フラット:全体=ブロック、ブロックによってボールを弾く

 図によるイメージにするとこうなります。

 


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こちらがフラット


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こちらがサークルになります。

 

では、このような配置とイメージの違いが何をもたらすのでしょうか?

 

一つはボールホルダーへのプレッシャーのかかり方です。

 

作戦版上ではかなり分かりづらいのですが、サークルは相手のボールホルダーに軸を向けるというコンセプトであるため、ボールホルダーに向けた軸線にたいして線対称の人の配置になるのでボールホルダーから見ると自分に対して向かっているプレーヤーが約10人いるように見えるわけです。(実際監督にはこの10人が相手を向くというのはかなり重要視するように言われていました。)

 

2つめはカウンター時の人数が多いことです。先ほど挙げたように軸線に対して線対称というのはつまり逆サイドのプレーヤーがかなり前に出ているということであるので、ボール奪取時に軸線を全く逆に向けると、カウンターの強度がかなり高くなります。基本的にサークルディフェンスは中央で奪うことが多いので中央で奪いそのまま逆サイド(ハーフスペース)に展開すると一気に数的優位のカウンターです。ハマるとえぐいですw

 

3つ目はスライドの距離の小ささです。

サークルディフェンスは基本的にサークルの外側を回されることがかなり少ないのですが、外側で回される場合はその都度ボールホルダーへ軸線を向けていくのですがこの場合、大体サークルの周に沿って少し動くと大体スライドが完了します。
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スライド距離も小さいですし、何よりスライドの向きがあまり変わらないので、ポジションのズレが小さくなる傾向があります。

 

対するフラットは


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スライドの向きが変わることと距離が長いことによって、ポジショニングのズレが出やすいことがわかるかとおもいます。

 当たり前といえば当たり前ですがフラットは敵陣逆サイドは空けているわけでその広大なスペースを再び埋めるためにはスライド距離が長くなってしまうわけです。逆にサークルはそこを元々埋めているわけですからそこまでスライド距離は長くはないということです。

ここまでメリットを見てきましたが、逆にデメリットももちろん存在しています。

例えば裏ポンに滅法弱いということです。丁寧なビルドアップをしてくるチームをいかにハメるかということから逆算してポジショニングを仕込んでいるため、裏のスペースがかなり広大に空いていて実質CB1人でカバーするような状態です。雑な縦ポンならまだ対応出来なくはないですが、こちらの逆サイドバックへの斜めのクロスファイアには全く対応できません。なのでサークルディフェンスを止めなければいけません。

 

他にも、チーム全員に高度な戦術理解度が問われます。中央のプレーヤーはヒト基準のポジショニングをすると全く持ってハマりません。スペース管理をしつつ中へのパスをかなり強く行かなければならないという難しさがあり、サイドプレーヤーは同サイドはきちんと縦をきりつつ中ドリをさせずプレッシャーーかけ、逆サイドは小さいサークルの裏のスペースをケアしつつサイドチェンジに対応できる、なおかつ2人以上見なければならないという難しさがあります。走行量が少なくなる分、ポジショニングが狂うと効果半減どころか効果なしとなるのがメチャクチャ難しいです。なので導入がかなり難しいです。

 

・サークルディフェンスの導入

サークルディフェンスの狙いは中で奪って逆サイドでカウンターです。中で奪う理由は軸線を向けているので、その軸線上が最もプレッシャーがかかるということになります。さらに、中央へパスを入られた時、文字通り360度からプレスがかかるため相当なプレッシャーになり奪いやすいからです。

 

サークルディフェンスをやる上でイメージして欲しいのはロボット掃除機のルンバですw


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ルンバって進行方向を向いてから動きますよね?そして最後にはゴミを吸い込んでしまうwあのイメージがじつはかなりピッタリです。そのイメージを実現するためにいくつか約束事があるのでそれを確認します。

 

一つ目、門をつくる。

相手のパスコースを限定するためにまずボールホルダーに対して2人が1stDFとなって外へのパスコースとやり直しのパスコースを消します。つまり「相手のボールが通る門」を作るわけです。言い換えれば1stラインの形成です。このとき特に重要なのはサイドハーフが縦を切ることです。やり直しはまあ許してもいいですが縦に行かれたら終了なので。

 

それによって、パスコースは青7、青4になりますが、ポジショニング的に7は厳しいので基本的に4に入ることが多いです。

 
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よって、その青4をケアするためにDFはボランチが「斜めに」前進して2ndライン形成し、プレスをかけます。(逆サイドに行かせたくないので背中からぶつかるイメージ。)基本的にはこの青4へのパスコースが狙いどころになります。

 

さて、ここで2つ目の約束事である逆側のCBが中盤に進出する。が出てきます。

 

まず、門をつくる時点でボランチが前進するというのはかなり怖いものです。なぜならバイタルをガッツリ開けることになるのでどうしてもビビってしまうんですね。次の図の状態ですね。


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 よって、この状態を解消するために逆サイドのCBが中盤に入りスペースを埋めてケアします。(それに伴い逆サイドのSBも少し絞る。)


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ボランチ2人+CBの3人で小さいサークルを形成し、この小さいサークルで引っ掛ける。という状況を作るわけです。

 

このときの注意点はうちのチームでも怖がってボランチが前に出ないことがあったのですがその瞬間に終了です。なぜなら、そのままクロスファイアされる可能性が非常に高いからです。その状況が次の図です。



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一気に擬似カウンターに持っていかれ、大ピンチを招きます。

 

戦術理解度が必要と言われるのはここあたりにポイントがあります。逆サイドへのクロスファイアはさけなければならないのでそれを予測したポジショニングが必要なので難しいんですね。それを理解し正しいポジショニングを取れるかが鍵です。

 

さて、サークルディフェンスについて書きましたが、いかがだったでしょうか?かなり分かりづらい記事になってしまったかもしれないのでもし質問等あればTwitterもしくは記事へのコメントをお願いしますm(_ _)m

Twitter→@gin3421

ポジショナルプレー概論3

こんにちわ、れうすです。今回はポジショナルプレー概論3をお届けしたいとおもいます。一応概論編最終回の予定です。(予定ですw)

ちなみ、実践編で書こうと思ってるのは、

質的優位ってなに?とか優位の三条件は「どうやって」作るのか?などポジショナルプレーを実践するために必要なことですね。文字通り実践編です。

 

さて、通常であればここで本論に入るのですが、申し訳ありませんm(_ _)m 今回の記事は読む前にまずこちらの記事↓をお読みください。(もう読んだことあるよ!って方はそのままgo!)

「Crash Course to Positional Play」 ポジショナルプレー短期集中コース 翻訳 パート3 - Take it easy

 

さて、では皆さん上の記事を読んだということで早速本論に入りたいとおもいます。今回のテーマはサポート」です。サポートとは何なのかを、明らかにしたいとおもいます。

 

・フェイズスペースとインタベンションスペースとは??

さあ、上記の記事を読んでいくとこの聞きなれない単語が出てきましたね。このフェイズスペースとインタベンションスペースというのは一体なんだというのでしょうか?読み進めていくと

フェイズスペース=広い

インタベンションスペース=フェイズスペースの中にある。

ということはすぐにわかりますね。ただ、あの記事を読むだけではいまいちピンとこないのではないでしょうか?分かるような分からないような……と思った人が多いはずです。しかし、この考え方は結構重要なので分からないまま放置してしまうのはあまりよろしくないので少しずつ分解して理解して行きましょう。

 

さて、まずは感覚的に理解を促すためにフェイズスペースとインタベンションスペースというのを単純に直訳して見ます。

フェイズスペース→局面の空間

インタベンションスペース→介入の空間

 

うーん……日本語にした分細かいニュアンスは伝わりやすく、少しはマシになりましたがまだまだ何かわからない……

ということで、さらに深く掘り進めましょう。まずはフェイズスペース。

「サッカーにおいてフェイズという言葉からどんなことを想像する?」と聞かれて、脳内で映像をつくれる人はなかなかいないと思うのですが、「サッカーにおいて局面ときいたらどんなことを想像する?」と聞かれたら「あー、ゴール前でシュート打ちそうな局面とか?」や「サイドで相手を崩してるようなところー」など、ボールを中心としたある場面を切り取った状況を思い浮かべられるのではないでしょうか?もし映像を思い浮かべられれば、その脳内映像のなかにいるプレーヤーは何かプレーに関与しそうですよね?

このような「局面」という言葉の使い方に納得していただければ、フェイズスペースの概念はあまり難しくありません。なぜならフェイズスペースというのはその通り「その局面でプレーに関与しうるスペース」であるからです。

 

この調子でインタベンションスペースも考えてみましょう。サッカーのプレーにおいて介入する。といえばボールの近くで関与してるのかな?と何となくイメージ出来るのではないでしょうか?つまりインタベンションスペースとはボールホルダーに対して積極的に関与するスペースと言えます。

 

では、言葉でざっくりとした概念を確認したところで、さらに図をつかってを深めて行きましょう。

 

 

この図においてフェイズスペースとインタベンションスペースを考えます。この場合であれば、全てのプレーヤーがボールに関与する可能性があるのでフェイズスペースは次のようになります。


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インタベンションスペースに関してはあまり厳密に定義はできませんが、SBに直接的には関与しうるスペースを考えると



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 おおよそこんな感じになります。いかがでしょうか?なんとなく、わかりましたか?

 

念のため、もう少し確認してみましょう。


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 この局面なら、図のようなフェイズスペースとインタベンションスペースが得られることになります。

 

一応注意していただきたいのはどちらもプレーに関与しうるなど非常に抽象的な概念ですので上の図でもこれが必ずしもフェイズスペース、インタベンションスペースと限定されるわけではなく、あくまでも説明の都合上明確に線引きがされているということです。

 

ポジショナルプレーで絶対的に必要なコンセプトを説明するためにはこのフェイズスペース、インタベンションスペースの説明が必要となるため、その二つがイメージしやすいように今回はかなり明確な線引きにしてあります。本来はもっとざっくりとした感覚的なものだ。ということは頭に入れておいてください。

 

さあ、重要な三つの概念(優位性、相互作用、スペース)の説明がついに終わりました。次の項ではこの3つのコンセプトが合わさってできるサポートについてふれていきます。

 

・サポートとは?

さて、みなさん何気なく「サポート」という言葉を使っていると思いますが、ではサポートをしろ!というのは具体的には何をすることなのでしょうか?

 

おそらく、そこらにいる中学生や高校生、下手をしたら指導者でさえも明確には説明出来ないのではないのでしょうか?

 

味方を助けること?ボールを受けれる位置をとること?じゃあそれって、近寄るの?離れるの??

 

味方を助けろなどよくいいますが、どうやったら味方を助けられるんでしょうか?たしかにボールを受けれる位置を取ることは味方を助けることになるでしょう。じゃあボールを受けれる位置ってどんな位置なんでしょうか?ボールを受けるためには近寄ることもあるでしょうし、離れることもあるでしょう。

 

そう、実はサポートという言葉は案外よく分からないことばなのです。もし指導者がプレーヤーに対して、こんな曖昧な言葉でサポートしろ!!とか叫んでいたとしたらプレーヤーが適切な位置を取れるわけありませんよね?

 

しかし、ポジショナルプレーという概念においては、それを構成する3つの概念を理解していれば、かなりサポートという言葉の抽象度を落とすことができるのです。

それでは、ポジショナルプレーにおけるサポートについてみていきましょう。

 

✩サポートを言語化しよう。

まず、サポートという言葉について一応定義させてもらいます。

 

サポート=ボールホルダーに対して相互作用を与えられるポジションを取ること。

 

この定義ではたしかに抽象度は高いままですが、すでに相互作用というのがなにかは述べていますからサポートという言葉をさらに分解することができますね。もっというなら相互作用をもたらすポジションとはどのようなポジションなのかも既に説明済みですからさらに分解可能です。

 

整理します。

サポート=相互作用を得られる=スペースと選択肢を得られる=優位の三条件をみたす。

 

となるわけです。いままでのざっくりとしたサポートよりも取るべきポジションというのはかなり限定されますね。

 

かなりサポートについて詳細の説明をしましたが、まだ不十分です。というのもサポートというのは2種類あり、今の説明ではその2種類の区別ができないからです。さあ2種類というのはどういうことなのでしょうか?

 

✩直接的サポートと間接的サポート

 前の項で、サポートとは3つの優位性を保つポジションをとることである。と述べましたね。おそらくここまでの説明を聞いた時みなさんが思い浮かべるサポートの光景はこのようなものなのではないでしょうか?

 
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水色の丸で囲まれた選手がサポートだ。というような光景です。

 

これは2種類あるサポートのうちの片方のサポートである直接的サポートに当たります。ボールホルダーに対して直接的にパスコースを与えていますよね。なので直接的サポートです。ただ、全員がボールホルダーに対して直接的にサポートすることって不可能です。なので、ボールホルダーからの位置関係によって、サポートの役割分担をする必要が出てくるわけです。そこで出てくるのが間接的サポートになるのです。そして、直接的サポートと間接的サポートを理解する上で先ほど扱ったフェイズスペース、インタベンションスペースの考え方が生きてきます。

では、もう片方のサポートである間接的サポートも確認しましょう。

 

間接的サポートとは簡単に言えば、フェイズスペースを広げることになります。よく言われる例を挙げるなら「ウイングはタッチラインまで張っておけ」というやつです。これが最もわかりやすい例でウイングがサイドラインまで張ることによってフェイズスペースは広がります。その結果として中央にスペースができるよねというのはもはやおなじみ。間接的サポートとは要するにこういうことです。他にもCBがカウンターに備えつつ、ビルドアップのやり直しにそなえる。とかチームのバランスを整えるポジションを取ることも間接的サポートにあたります。サイドバックインサイドハーフ化などもそれにあたりますね。これは中盤の数的優位を保ちつつインサイドレーンからのカウンターのケアをしますから間接的にサポートすることになっています。

 

 
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 (図ではCFはDFラインと駆け引きしてスペースを確保しようとしているし、ウイングも同じ、左SBの2は中盤に参加しつつインサイドレーンをケアしている。)


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 (この図ではFWがDFラインに駆け引きをしていないため使えるスペースはかなり狭い。)

 

いかがでしょうか?サポートについて伝わりましたか?一応書いておくと直接的サポートというのはインタベンションスペースの中で行われるものということになります。ですからなるべくインタベンションスペースの最大値のところに立つことが直接的サポートで重要なことになります。

 

そして、ここがサポートを理解する上で最も重要なことですが、サポートは直接的サポート、間接的サポートが合わさって初めて成立する。ということです。下の図を見てください。

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この図の状況ではインタベンションスペーススペース内での直接的サポートが欠けています。これではボールホルダーに対してパスコースはありませんから、選手同士の相互作用は失われています。つまり間接的サポートだけでは意味がないということです。

 

それでは、最後にサポートについてまとめます。

サポート=直接的サポート、間接的サポートの両方があって初めて「サポート」は成立する。

 

・まとめ

さて、ここまでポジショナルプレーについて書いてきましたが、ポジショナルプレーというのはどういう考え方かというのを大分分解してきたつもりです。ポジショナルプレーというのは至ってシンプルな考え方なのです。

よりよいポジションに立つことにより、選手同士の相互作用を発揮し、相手より優位に立つ。

目的はただこれだけです。ここまでかなり長々と書いたきましたが、もしポジショナルプレーというものを雲の上の難しいものだと思っていた方が、このブログを読んで身近なものに感じていただけたら僕はうれしいです。いちおうこの後も実践編というの書く予定なので、もし興味がありましたら、実践編も読んでいただけたらもっと嬉しいです。

 それでは、長文読んでくださりありがとうございましたm(_ _)m

 

 

 

ポジショナルプレー概論2

れうすです。今回も引き続きポジショナルプレー概論を書いていこうとおもいます。ポジショナルプレーについては結構書きたいことがたくさんあるのでまとめるのが大変なのですが、概論を今回でなんとか終わらせて早く実践編に移りたいなと思ってます。ちなみに概論では、本当に概要しか触れていないので細かい解析や僕なりの理論分解は実践編からになるのでみなさんもう少し待っててね( ^ω^)ニコッ

(前回のポジショナルプレー概論1を読んでから、2を読むことをおすすめします)

 

・選手同士の相互作用

さて、それでは本文に入りましょう。概論1ではいいポジションについて述べましたが、今回は選手同士の相互作用について話していきます。この項のキーワードはスペースになります。

それでは相互作用(以下シナジーと呼ぶ)の抽象的なイメージを確認しましょう。

 

シナジー=相手DFの守備ゾーンの最大化をしつつ、味方選手同士がプレーの選択肢を複数持てるような関係性を構築している。

 

さてニュアンスは伝わると思うのですが、まだいまいち分かりにくいですね…シナジーに関して具体例を用いながら、よりイメージを鮮明にしていきましょう。

 

まず相手DFの守備ゾーンの最大化についてです。これはわかりやすいと思うのですが、守備の基本としてなるべく守るエリアを小さくするというコンセプトがあると思います。これはまあ当然といえば当然で、1人で守れるゾーンというのは限界があるわけですし、それが広ければ広いほど守備の強度は落ちてしまうわけです。ならば守備強度の低下を防ぐためにはなるべく守備すべきゾーンは小さい方がいい。というのはごく当たり前な話だとはすぐわかりますよね。

 

では、攻める側に立てば、逆のこと、つまり守備すべきゾーンの最大化をさせることをすべきというのも当たり前になる訳です。言い換えるとすれば味方にスペースを与えるということになります。(このような「ゾーン」に関わることなどを数学的に解析した「サッカーマティクス」という本があります。物凄く新鮮なのでぜひご覧ください。)

 

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  それでは、この「ゾーンの最大化」(≒スペースを与える)を図をつかって感覚的な理解を促してみます。

 

図1




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例として、このような4vs4の局面を想定します。グレーは1人が守れるゾーンの最大値、水色が最も能力を発揮できるゾーンと考えてください。

図1を見れば、OFがそれぞれゾーンの最大値の境界に立っているため、DFはオフェンスをマークするために最大の労力が強いられることがわかります。これが守備ゾーンの最大化ということになります。さほど難しくありませんね。

 

では、ここらからがポジショナルプレーで最も重要な話になるのですが

このポジションに立つことは果たして「良いポジション」に立っていることになるのだろうか?

ということです。賢明な皆様ならお分かりでしょう。答えはNOです。

 

なぜか?それはこのポジションに立つことは選手同士の相互作用をもたらしていないからなのです。

たしかに、守備ゾーンの最大化に成功し、ボールホルダーにスペースを提供することは出来ました。しかしそれだけです。これでは「相互作用」とはいえません。ただ「ボールホルダーへの作用」に留まります。

 

どういうことなのか?簡単です。本当にそこでボールを受けられるの???ということです。図の状況でいうならボールホルダーからのサポート距離が遠すぎてパスが出せません。ボールが受けられないのであれば、そもそも選択肢はドリブルしかありませんから守備は簡単ですね。

はい。ここで概論1で出てきた3つの優位条件が出てくるわけです。

一応おさらいしてみましょう。3つの優位条件とは

  1. 数的優位
  2. 配置的優位
  3. 質的優位

の三つでした。なぜこの三条件が大事なのかというのは「相互作用」を発揮するために必要だからなのです。3つの条件を満たすことがなぜ相互作用をはっきすることになるのか、さらに図を見てイメージを鮮明にしましょう。

図1ーA


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まずこの図、見ての通り青4にたいして数的優位を保っています。しかし配置的に優位に立っているでしょうか?NOですね。青4は最小の労力、つまり立っているだけで赤8、10を守備できるからです。これでは配置的に優位とはいえません。

 

もうひとつの質的優位も全く満たせていません。なぜならボールホルダーに対してスペースが与えられていないためプレーの選択肢が限りなく少ないからです。パスを出せば間違いなくプレスがかかるし、ドリブルするスペースもない。これでは能力が発揮できませんね。よって相互作用がまったく発揮されないため「良いポジション」とは言えないでしょう。

 

次です。

図1ーB


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詳しい説明は省きますが、全てのオフェンスが配置的優位に立てていませんし、数的優位もありません。唯一言えることはお互いにスペースを利用しあえる距離感を保っていて質的優位がぎりぎり保てている。というくらいでしょうか。とはいえたいして優位ではないので「良く」はないですね。

このあたりで段々分かって来たでしょうか?3つの優位を保つポジションを取ることは

  1. ボールホルダーに対してパス、ドリブル(ドリブルできる≒スペースがあるということ)など複数の選択肢を与える。
  2. 味方のプレーヤーはプレー選択肢が増え、なおかつ時間が与えられる。

というメリットをもたらすのです。

そのメリットを享受できるようなポジションがこちら⬇

図2ーC


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守備ゾーンの境界に立つことで配置的優位を得るとともに局所的に数的優位を得ています。また適切な距離感を保つことでスペースも得ていて、プレー選択肢も多く質的優位を保っていると思います。

 

さあ、ポジショナルプレーの「良いポジション」というのがぼんやりとしたイメージから論理プロセスとして認識できるようになってきたのではないでしょうか?

 

今回はこの相互作用について、大体の説明が終わったところで終わりたいとおもいます。相互作用は抽象的なイメージの域を出ないとは思うのですが、それでもかなり論理的に整理したつもりです。それが少しでも伝わっていれば嬉しいなあとおもいます。

最後に、

   ポジショナルプレー=相互作用の発揮

                                      ↓

                           優位の三条件

という構図になっているよーということを確認して終わりたいとおもいます。

長文読んでくださりありがとうございました。

ポジショナルプレー概論3 - フットボールの参考書へ続く)

ポジショナルプレー概論1

皆さん、こんにちわ、れうすです。最近サッカーに関するものを見ていると、Twitterをはじめとする様々なところでポジショナルプレーという言葉をよく目にしますね。自分が最初に目にしたのはグアルディオラ総論という本で、はじめはよく分かっておらず「なんだこれ?」と思っていたのですが、グアルディオラ総論を読み進め、さらに、ネットで見かけた解説などを見たり、マンチェスターシティの試合を見るうちに理解が深まってきたので、今回は自分なりに分解してお伝えしようと思います。

・ポジショナルプレーを理解する上で

 巷で話題になっているこのポジショナルプレー。ポジショナルプレーとはなんなのか?というのをなるべくわかりやすく話していきたいと思います。この項では、ポジショナルプレーを理解する上で必要な前提を確認することになります。まず、ポジショナルプレーときいてイメージするものとしてありがちなのが、ポジショナルプレー=ポゼッションという認識です。何故このような認識になるかといえばこのポジショナルプレーの代表として挙げられるのがマンチェスターシティやナポリなどポゼッションという手段を用いて戦うチームだからなのではないでしょうか?まず、ポジショナルプレーというのは戦術ではなく、概念であるということが鍵になります。(ポジショナルプレー≠戦略、戦術ポジショナルプレー=概念

ペップはあくまでこのポジショナルプレーという概念に基づき、それを実践する手段としてボールを保持するということを選択しているに過ぎません。事実アトレティコマドリーや今季のバレンシアなど一般的にカウンターを主戦術にしているチームもポジショナルプレーを実践しています。なので理解して欲しいことは、

ポゼッション=プレーモデルを実現するための手段→「戦略」

                                   

ポジショナルプレー=「戦略」や「戦術」の上位に位置される「概念」であること。

となります。

 

 もう一つ確認すべきこととしてポジションという用語についてです。これはこのブログにおける便宜上の確認ではあるのですがポジションという用語の意味をある程度限定していくということを確認してください。かなり表現として難しいのですが、一般的にポジションというと、二つの使われ方があります。

  1. システム、フォーメーション上の役割を表す意味でのポジション(ex.センターフォワードセンターバックなど)                 
  2. プレー中のプレーヤーの位置(立ち位置)

これらはみなさん自然に使い分けていると思うのですが、ポジショナルプレーを理解する上で2の意味で理解すべきところを1の意味でかんがえると全く意味が通じなくなってしまいます。なので、本文中では基本的に2の意味でポジションということばを使うのでそのあたりを確認いただければと思います。

 

まずこのことを確認した上で、次の項でどのような概念なのかということを書いていきます。

 

・ポジショナルプレーという概念

さて、ここからポジショナルプレーという概念に深く手を入れることになります。まずポジショナルプレーという概念がどのようなものなのかを抽象的に表現していきます。

ポジショナルプレーとは、よいポジションに位置するプレー

うーん………さすがにこれでは意味が分からないですね( ˘•ω•˘ )、しかし、実はポジショナルプレーがどのようなプレーなのかを理解する上では、まずこのかなり抽象的な良いポジションに位置するということを念頭に置き、この良いポジションとはなんなのか?を掘り下げていくことが理解への早道になりるのです。ではこれを踏まえて、早速良いポジションとはなんなのかを順番に掘り下げていきましょう。

✩良いポジジョンとは?

そもそも良いポジションとはなぜ「良い」と呼ばれるのでしょうか?これはポジショナルプレーという概念に大きく関わるものですが、まずポジショナルプレーの理論化に大きく貢献したファンマ・リージョの言ったことを要約すると

各選手、監督は、選手間の相互作用を引き出しながら行動すべきである。

ということを言っています。このことから「良いポジション=味方との相互作用を引き出せるポジション」と言えるのです。では味方の相互作用を引き出すというのはどういうことなのか?例えば、2vs1の局面で言うなら「ボールホルダーではないOFはDFが同時に守ることの出来ない位置にサポートをする」が代表例(あくまで代表例。定義ではない)となりますね。

これを図でざっくりと説明してみます。

図1
f:id:reus433:20171106171738j:image 

図2
 f:id:reus433:20171106171749j:image

図1ではDFはボールホルダーのAに対してアプローチするとBへのパスによってフリーで前進されてしまい、図2ではBをマークしようとするとAにドリブルで前進されてしまう。図でいうとBは「いいポジション」を取っていたと言えるのです。ではこのいいポジションを言語化するとどうなるのか?それが有名な3つの条件となるわけです。

  1. 数的優位をもたらすポジション
  2. 位置的優位をもたらすポジション
  3. 質的優位をもたらすポジション

ポジショナルプレーを少し学ぶと必ず行きあたるワードであると思うのですが、この三つをみたすのが「良いポジション」になるというわけです。図で言うならば、Bは

  • DFに対して2vs1の数的優位をもたらしている
  • BはDFよりゴールの近くにおり、なおかつ視野の外にいるため配置的優位に立っている。

(質的優位も満たしてはいるが、これらの条件は先の記事で述べるため割愛)

と、優位の条件を満たしている「良いポジション」に立っているということがわかります。

今回はポジショナルプレーのコンセプトの「良いポジション」についてざっくりと(概論なのでw)解説したところで終わりたいとおもいます。

ポジショナルプレー概論2 - フットボールの参考書へ続く。